30年以上続いた冷えと不眠 ― 手のほてりに悩まされた日々からの脱却

30年以上続いた冷えと不眠 ― 手のほてりに悩まされた日々からの脱却

夜中に目が覚める手のほてり、夏でも靴下が手放せない足の冷え ― 施術を重ね、30年ぶりにぐっすり眠れる日々へ

70代女性
来院に至った経緯
30年前、40代の頃から手足の冷えを強く感じるようになった。それ以前は冷えを意識したことはなかったが、ある時から手首から先、足首から先がまるで冷蔵庫の中に入っていたかのように冷たくなり、違和感を覚え始めた。

特に足の冷えは耐えがたく、夏でも靴下を3~4枚重ねて履き、冬には5~6枚の靴下に加え、湯たんぽや電気毛布を使用していた。それでも冷たさは解消されず、夜中に何度も目が覚めるほどだった。

また、同じ時期から左のお尻に突っ張るような違和感が出現し、時折、左お尻から太もも裏にかけてビキッと電気が走るような痛みを感じることがあった。坐骨神経痛と診断されるほどの強い痛みではなかったものの、疲労が蓄積すると必ず左お尻の張りが強くなった。そのため、定期的にマッサージを受けることで対処していた。

10年ほど前からは睡眠の質にも変化が現れた。それまでは布団に入るとすぐに眠れていたが、次第に寝付きが悪くなり、ひどい時には3~4時間以上も布団の中でゴロゴロしてしまう日が増えた。病院を受診すると「不眠症」と診断され、睡眠薬を処方された。しかし、もともと薬に頼ることに抵抗があったため、服用することに躊躇いがあった。

それでも、眠れない状態が続くことのほうが辛かったため、思い切って睡眠薬を飲むことにした。薬を服用すると、多少は寝付きが良くなったように感じたが、それでも布団に入ってから1~2時間は寝付けない日が多かった。

睡眠の質の低下が続く中、半年ほど経った頃から、新たな症状が出現した。夜中に突然、手がほてるような熱感で目が覚めるようになったのだ。しかも一度目が覚めると、手のほてりが気になって再び眠ることが難しくなった。次第にほてりの強さが増していき、最終的には保冷剤を握りしめて寝るようになった。

何か重大な病気ではないかという不安から、病院で脳や心臓の精密検査を受けたが、結果は異常なし。しかし、医師からは『年齢によるものだから気にしないでください』とだけ伝えられた。確かに年齢とともに体の変化はあるのかもしれないが、これほどまでに急激な症状の変化を“加齢のせい”と片付けられることには、どうしても納得がいかなかった。

その後、病院以外の治療法も試すことにし、鍼治療、温熱療法、デトックス療法など、さまざまな治療院を訪れた。しかし、どの治療も思うような効果は得られず、症状は一向に改善しなかった。

そんな中、娘から「カイロプラクティックを試してみたら?」と勧められ、紹介を受けたことをきっかけに当院へ来院された。


【神奈川県秦野市から来院】
初診の状態
  • 01

    左仙骨翼にスポンジ状の浮腫

  • 02

    左仙腸関節の可動域制限

  • 03

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左仙骨翼と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頸部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD6レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、ご高齢で遠方からの来院だったため、週1回のケアから開始した。

5週目(4回目のアジャストメント)には、長年続いていた左お尻の張り感が完全になくなり、違和感を感じることがなくなった。

9週目(7回目のアジャストメント)には、夜中に手のほてりで目が覚める回数が明らかに減少。さらに、足の冷えも改善がみられ、靴下の重ね履きの枚数を減らせるようになった。

15週目(11回目のアジャストメント)には、睡眠の質が大きく向上し、睡眠薬を服用しなくても自然に眠れるようになった。この頃には、手のほてりで夜中に目を覚ますことは完全になくなっていた。

22週目(15回目のアジャストメント)には、足の冷えもほとんど気にならなくなり、30年以上ぶりに靴下を履かずに就寝できるようになった。これにより、冷え対策として必要だった湯たんぽや電気毛布の使用頻度も減少。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の手のほてりや足の冷えの主な原因は、自律神経のバランスの乱れにあったと考えられる。

自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成り立っているが、検査では副交感神経の働きに関与する上部頸椎と骨盤部に強い反応が確認された。副交感神経の機能が低下すると、相対的に交感神経が過剰に働く状態が続いてしまう。

交感神経の主な作用には末梢血管の収縮があり、この状態が慢性的に続くことで血流が低下し、末端の冷えが生じる。患者本人は「手がほてる」と訴えていたが、触診では手首から先や足首から先が極端に冷えていた。これは、感覚神経の異常による温度感覚の誤認が生じていた可能性がある。

冷感や温感を感知する神経は、痛覚を感じる神経と同じく感覚神経が支配している。長期間にわたる末端冷え性の影響で感覚神経に異常が生じ、本来冷えている状態であるにもかかわらず「ほてり」として脳が認識していたと考えられる。患者はこのほてりを解消しようと、保冷剤を握りしめて寝ていたが、実際には血流異常が根本的な原因であり、冷やすことでさらに末端の血流が悪化し、症状の悪循環を引き起こしていた可能性が高い。

また、不眠症の発症も、交感神経の過剰な働きによるものと考えられる。通常、就寝時には副交感神経が優位となり、体がリラックスモードへと切り替わる。しかし、副交感神経の働きが低下していると、交感神経の過活動が続き、リラックスするスイッチが入らないため、寝つきが悪くなるだけでなく、浅い眠りになってしまう。

さらに、左のお尻の張り感や、左臀部から太もも裏にかけてビリッと走るような痺れは、仙骨部から出る神経に負担がかかっていたことを示唆している。仙骨部は坐骨神経痛と関連が深い部位であり、ここに機能的な問題が生じると、慢性的な神経の圧迫や炎症が起こることがある。

痛みの感覚は、「正常→痛み→痺れ→麻痺」の順番で進行していく。患者が経験していた「痛みに似た痺れ」は、長期間にわたって神経に負担がかかっていたことを示している。

手のほてり、足の冷え、不眠症、坐骨神経痛といった症状はそれぞれ異なるものの、根本的な原因は自律神経のバランスの乱れと、それに伴う神経系の機能低下にあると考えられる。

この症例を通じて、神経のバランスを整えることが、症状の根本的な改善につながることが改めて確認された。長年の不調に対して『年齢のせい』『仕方のないこと』と諦めるのではなく、適切な神経アプローチを行うことで、体は確実に変化していく。30年以上続いた冷えや不眠が改善したこのケースは、カイロプラクティックケアの可能性を再認識させる重要な症例である。
30年以上続いた冷えと不眠 ― 手のほてりに悩まされた日々からの脱却
30年以上続いた冷えと不眠 ― 手のほてりに悩まされた日々からの脱却 30年以上続いた冷えと不眠 ― 手のほてりに悩まされた日々からの脱却 30年以上続いた冷えと不眠 ― 手のほてりに悩まされた日々からの脱却
前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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