仕事を辞めざるを得なかった自律神経失調症が改善！

めまい・耳鳴り・頭痛・不眠…病院を転々としても治らなかった不調が改善

来院に至った経緯

ある朝、目覚めた瞬間に左耳から鋭いキーンという耳鳴りが鳴り響いた。ベッドから起き上がろうとしたところ、突然強烈なめまいが襲い、その場で倒れ込んでしまった。しばらく動けずに横になったまま過ごし、約15分後にようやく立ち上がることができたが、洗面所の鏡を覗くと、まるで世界がグルグル回っているかのように見えた。

不安を感じながら会社に連絡すると、上司が「すぐに病院へ行け」と指示をくれたため、妻に車を運転してもらい、急いで病院へ向かった。しかし、診察の結果は「特に異常なし」。医師からは「過労でしょう。しっかり睡眠をとってください。」と言われただけだった。確かに仕事は忙しく、ここ最近は睡眠不足が続いていたこともあり、その日は帰宅してひたすら休養を取ることにした。

翌日、出社して仕事をしていると、再び左耳から鋭い耳鳴りが発生。今回はめまいこそなかったものの、強烈な頭痛に襲われ、業務を続けられないほどの状態になったため、早退して別の病院を受診することにした。

前日に受診した病院で「異常なし」と診断されたことを伝えると、今度は脳の精密検査を行うことになり、MRIやCTを撮影することになった。しかし、半日がかりの検査の結果も「異常なし」。結局、明確な診断がつかないまま帰宅することになった。

帰宅後、上司に経過を報告すると、「しっかり休め」と1週間の休暇をもらえることになった。病院でも特に問題は見つからなかったため、1週間ゆっくり休めば回復するだろうと考えていた。しかし、5日経っても、6日経っても症状は変わらず、耳鳴り、めまい、頭痛を繰り返し、仕事に復帰できる状態にはなかった。

結局、休職を余儀なくされ、その後も病院を転々とすることになった。最終的に心療内科を受診し、「自律神経失調症」と診断された。この頃から、睡眠の質が急激に悪化し、夜に眠ることができなくなった。

睡眠不足が続くうちに、手足の冷えを強く感じるようになり、再び病院で相談したところ、睡眠薬を処方された。しかし、「眠れないのはここ最近の話で、最初は耳鳴りやめまい、頭痛が出ていた」と伝えたものの、医師からは「とにかくまずはこれを飲んで様子を見てください」と言われるだけで、根本的な解決にはつながらなかった。

その後も体調は一向に回復せず、結局何か月も仕事を休むことになり、最終的には退職を余儀なくされた。職を失ったことで将来への不安に押しつぶされそうになり、支えてくれていた上司への申し訳なさから、精神的にも追い詰められていった。

家族も心配し、少しでも回復の糸口を探そうと、自律神経に特化した整体院や鍼灸院などを見つけては通わせてくれた。しかし、どこへ行っても期待していたような改善はみられず、次第に「もう何をやってもダメなのか」と諦めの気持ちが強くなっていった。

そんな時、家族が当院のホームページを見つけた。症例報告には、同じように自律神経失調症で悩んでいた人が改善したケースが掲載されており、「ここなら良くなるかもしれない」と希望を持ち、来院することを決意した。


【神奈川県藤沢市から来院】

初診の状態

• 01

  第一頸椎左横突起に顕著な浮腫

• 02

  頚部左胸鎖乳突筋の過緊張

• 03

  左仙骨翼にスポンジ状の浮腫

経過と内容

初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎左横突起と左仙骨翼に強い浮腫が確認され、頚部左胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きが確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD6レベルで激しい椎骨の変性が確認され、首の前弯カーブ（前カーブ）は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期では週3回のケアが必要な状態であったが、休職中ということもあり通院の負担を考慮し、週1回のケアから開始した。

2週目(2回目のアジャストメント)には、耳鳴り、めまい、頭痛の頻度が明らかに減少し、発作の間隔が長くなった。

11週目(6回目のアジャストメント)には、耳鳴り、めまい、頭痛が完全に消失し、睡眠の質が改善され始めた。夜間の中途覚醒も減少し、朝の目覚めがスッキリするようになった。

21週目(9回目のアジャストメント)には、睡眠薬なしでも自然に眠れるようになり、日中の倦怠感も軽減。これまでの体調不良から抜け出し、就職活動に取り組めるまで回復し、無事に再就職を果たした。

37週目(12回目のアジャストメント)には、全身の調子が軽快になり、手足の冷えも感じなくなっていたことに本人も気づかないほど改善していた。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察

今回の自律神経失調症は、まさに自律神経のバランスの乱れが根本的な原因であったと考えられる。

検査では上部頸椎と骨盤部に強い反応がみられたが、これらの部位はともに副交感神経が支配する領域である。副交感神経支配の部位にサブラクセーション（根本原因）が存在していたことで、交感神経が過剰に働き、自律神経のバランスが崩れてしまったのだろう。

この影響は、特に末端冷え性として顕著に現れていた。交感神経は末梢血管を収縮させる作用を持つため、その過剰な働きが長期間続くことで末梢血管が閉じたままとなり、血流の滞りを引き起こしていたと考えられる。

また、耳鳴りの原因として考えられるのは、脳が聞き取れなくなった音（特定の周波数）を補おうと、聴覚の感度を過剰に上げてしまったことにある。これは、ラジオの音量を過度に上げたときに雑音が混ざる現象と似ており、聴覚過敏によって耳鳴りが発症していたと推測される。

検査で特に強い反応がみられた上部頸椎は、耳との関連性が深い。人間の平衡感覚は内耳が大きく関与しており、上部頸椎の神経の機能低下によって耳鳴りのみならず、めまいが発症していたと考えられる。また、上部頸椎は脳幹に最も近い重要な部位であり、ここに負荷がかかることで頭痛の原因にもなっていた可能性が高い。

今回の症例では、顕著な腰痛の症状はみられなかったが、骨盤部の左右差が明らかに確認された。さらに、腰部の椎間板が慢性的なD4レベルに達していたことから、腰の神経にも長年にわたり継続的な負荷がかかっていたと考えられる。

神経は非常に繊細で、わずか10円玉程度の圧力が加わるだけでも、その伝達機能が約60%も阻害されるという研究結果がある。しかし、神経の流れが60%遮断された状態でも、必ずしも痛みを感じるとは限らない。

つまり、自律神経の問題にしろ、一般的な痛みにしろ、症状が急に現れるように見えても、神経への負荷は時間をかけて徐々に蓄積され、限界に達したときに表面化するという特徴がある。

また、人間は重力の影響を受けながら日常生活を送っているが、背骨は骨盤の上に位置するため、骨盤は身体の「土台」となる部分である。一方で、上部頸椎は建物に例えると「最上階」にあたる。そのため、骨盤部の乱れは、結果的に最上階である上部頸椎に大きな負荷を与えていた可能性が高い。

アジャストメントによりサブラクセーション（根本原因）が取り除かれ、自律神経のバランスが整ったことで、さまざまな症状の改善につながったと考えられる。

「自律神経のバランスが乱れている」と一言でいっても、交感神経が過剰に働いているのか、副交感神経が低下しているのか、その状態を正しく見極めることが重要となる。そのためには、問題のある部位を特定し、神経の流れを正常化させることが不可欠であり、本症例はその重要性を改めて確認できるケースとなった。