検査では異常なしと言われ続けた原因不明の左下腹部痛と更年期症状

検査では異常なしと言われ続けた原因不明の左下腹部痛と更年期症状

薬に頼らず、長年続いた下腹部の痛みが解消!

50代女性
来院に至った経緯
2年前から原因不明の左下腹部痛に悩まされていた。特に何かきっかけがあるわけでもなく、突然鋭い痛みに襲われることが頻繁にあった。姿勢や気圧、気温の変化も関係なく、特に朝方の痛みが強いものの、午後になっても鋭い痛みは続く状態だった。

病院では、MRI、レントゲン、エコー検査、大腸内視鏡検査、血液検査、尿検査と、あらゆる検査を受けたが、いずれも異常なしと診断された。夜も眠れないほどの痛みがあることを医師に伝えたところ、整形外科では痛み止め、内科では睡眠薬を処方された。

それでも症状が改善しなかったため、別の病院でセカンドオピニオンを受けたが、同じく異常なしとの診断だった。骨や内臓の問題ではないとすれば脳の異常かもしれないと思い、脳神経外科を受診したが、そこでも脳に異常は見つからなかった。さらに、更年期障害の影響を疑い、婦人科を受診した際に下腹部の痛みについても相談したが、「異常がないなら様子を見ましょう」と言われるだけだった。

次第に、処方された薬の量が増えていった。痛み止め2種類、漢方2種類、睡眠薬を服用する日々が続き、自分でも薬の量が多いと感じていた。それでも、どれだけ薬を飲んでも左下腹部の鋭い痛みが治まることはなく、むしろ悪化しているように思えた。

思い当たることといえば、痛みが出る3か月ほど前に乳がんの手術を受け、その際にリンパ節切除も行っていた。しかし、手術を受けた病院で相談しても、「リンパ節切除が原因で下腹部に痛みが出ることは考えにくい」と言われた。

5年前には人生で初めてぎっくり腰を経験しており、その後しばらく腰痛が続いていた。ただ、左下腹部の鋭い痛みが出てからは不思議と腰痛は感じなくなり、その代わりに左脚全体にしびれが出るようになっていた。しかし、あまりにも下腹部の痛みが強すぎたため、左脚のしびれについて気にする余裕すらなかった。

この痛みは一向に治まることがなく、痛み止めを飲んでも十分に緩和されず、激痛に襲われることが増えた。痛みのために眠ることもままならず、睡眠薬を服用しても効果が感じられない日が続いた。次第に仕事にも支障をきたすようになり、出社するのが難しくなる日が増えていったため、完全テレワークへと切り替えてもらった。しかし、それでも痛みは改善せず、このままでは仕事を続けることも難しくなるのではないかという不安が募っていった。

そんなある日、職場の同僚から突然電話がかかってきた。「そんなに辛い症状だとは思わなかった。ここに通ってみたら?」と強くカイロプラクティックを勧められた。それまで病院以外の治療を受けたことはなかったが、同僚がわざわざ電話をかけてまで紹介してくれるほど信頼している先生なら…と考え、紹介という形で当院を訪れることになった。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    左仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    左上後腸骨棘上端にスポンジ状の浮腫

  • 03

    腰部起立筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左上後腸骨棘上端と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頸部左胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD6レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。

4週目(5回目のアジャストメント)には、これまで寝起きから続いていた強い左下腹部の痛みが軽減し始めた。同時に、左脚全体が重だるく感じるようになった。

7週目(8回目のアジャストメント)には、左脚のしびれが徐々に軽くなり、腰痛を明確に感じるようになった。この時点で、左下腹部の痛みはさらに緩和し、午前中はほとんど気にならないレベルまで改善。ただし、デスクワーク中は長時間座っていると午後になるにつれ痛みが増してくる傾向があった。

12週目(12回目のアジャストメント)には、鋭い左下腹部の痛みはほとんど感じなくなり、腰痛も明らかに改善。左脚のしびれも完全に消失した。

16週目(15回目のアジャストメント)には、顔のほてりが大幅に軽減し、夜は睡眠薬を服用しなくても眠れるようになった。さらに、ほてりの改善とともに手足の冷えも気にならなくなり、全身の血流が改善されていることが実感できるようになった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の原因不明の左下腹部痛は、左仙腸関節の可動域制限が大きく関与していたと考えられる。加えて、長年続いていた腰痛や左脚のしびれを踏まえると、骨盤のバランスが乱れたことによって腰部の神経に長期間にわたり負担がかかり続けていたことが推察される。

左下腹部の痛みは、腰部の神経からの放散痛であった可能性が高い。痛みが長期間続くと、痛覚の変化が生じ、脳が痛みを異なる部位として認識することがある。さらに、長期間にわたる鎮痛剤の使用は、神経の感覚を鈍らせる一方で、痛みの伝達経路を変化させることがあり、今回のケースでもその影響が関与していた可能性がある。

人間の痛覚は、「正常→痛み→しびれ→麻痺」という順序で進行する。今回のケースでは、腰部の神経が長期にわたり圧迫され続けた結果、腰部の感覚が麻痺し、それに伴い左脚にはしびれが現れ、さらに放散痛として左下腹部に鋭い痛みを感じる状態にまで進行していたと考えられる。特に鋭い痛みが持続する場合、副交感神経の機能低下が影響しているケースが多い。

検査では、骨盤部と上部頸椎という、副交感神経の支配を受ける部位に強い異常反応がみられた。これらの部位にサブラクセーション(神経機能の異常)が生じていたことで、交感神経が過剰に働いてしまい、自律神経のバランスが崩れていたと推察される。

ホットフラッシュや末端冷え性、不眠、イライラといった更年期障害のような症状も、自律神経の乱れによる影響が大きいと考えられる。更年期に差し掛かると卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が減少するが、脳がその変化を適切に認識できないと、更年期障害の症状が強く現れやすくなる。

通常、女性ホルモンの分泌が減少すると、脳は卵巣に対して「ホルモンを分泌するように」という指令を送る。しかし、役割を終えた卵巣はその指令に応じることができない。本来であれば、神経の伝達が正常であれば脳はすぐに状況を把握し、過剰な指令を送ることを止める。しかし、脳と卵巣をつなぐ神経伝達に異常があると、脳は「なぜホルモンが分泌されないのか」と混乱し、交感神経を介して過剰な指令を出し続けてしまう。

この過剰な交感神経への指令が、交感神経を過敏に刺激し続けてしまい、ホットフラッシュや発汗異常、動悸、イライラなどの更年期障害の原因となる。さらに、交感神経は血管を収縮させる働きを持つため、その影響が長期間続くと末梢の血流が低下し、手足の冷えといった末端冷え性の症状も引き起こしやすくなる。

アジャストメントによってサブラクセーション(神経機能の異常)が解消され、自律神経のバランスが整ったことで、左下腹部の痛みだけでなく、更年期障害のような症状も改善されたと考えられる。本症例は、神経の流れを正常化し、身体の情報を脳に適切に伝えることの重要性を再確認できるケースである。
検査では異常なしと言われ続けた原因不明の左下腹部痛と更年期症状
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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