起立性調節障害で学校に通えない日々…薬に頼らず改善！

朝起きられない、会話が噛み合わない…薬に頼らず回復した高校生の実例

来院に至った経緯

中学2年生の夏休み初日、息子が突然起きられなくなった。最初は「夏休みだから少しくらい朝寝坊しても大丈夫だろう」と思っていたが、次第に起きられない日が増え、日中の活動にも支障をきたすようになっていった。朝だけでなく、昼間もぐったりとして動けない状態が続き、食欲も落ち、以前のような元気な姿が見られなくなっていった。

なんとか高校へ進学できたものの、ほとんど学校に通えない状態が続いた。それだけでなく、会話の口調や態度が以前とはまるで違い、まるで別人と話しているかのように感じることもあった。それまでは明るく活発だった息子が、表情を失い、会話も短く単調になり、時には話しかけても反応が薄いことも増えていった。その変化に不安を覚え、「もしかして遺伝的な問題なのでは？」と考え、アメリカから遺伝子検査キットを取り寄せて調べたが、異常は見つからなかった。

病院では、抗うつ剤2種類、睡眠薬、抗不安薬を処方された。しかし、まだ高校1年生の息子を薬漬けにすることには抵抗があったため、以前から信頼していた有名な代替医療の先生を訪ねることにした。診断の結果、「熱中症が原因」と言われたが、これほど重い症状が単なる熱中症から起こるとは考えにくく、疑問を感じた。さらに、熱中症と診断されたものの、具体的な治療法の提案はなく、ただ様子を見るようにと言われただけだった。

その先生の勧めで鍼治療も試したが、施術中に強い痛みを感じたため、本人が強く拒否。治療を続けることはできなかった。その後、漢方も試してみたが効果はなく、息子の状態はさらに悪化。会話がかみ合わなくなり、家族とのコミュニケーションも難しくなっていった。部屋にこもることが増え、外出する機会も減り、日常生活のほとんどを寝たきりのように過ごすようになってしまった。

そんなとき、YouTubeで塩川満章先生の動画を見つけた。その内容に強く惹かれ、「もしかしたら息子の症状にも効果があるかもしれない」と思い、すぐに問い合わせをした。しかし、塩川先生の予約は非常に取りづらく、すぐの受診は難しいことが分かった。

どうしても息子を救いたいという思いからさらに調べた結果、藤沢駅前に塩川先生の弟子が開院していることを知った。その先生は、銀座の塩川カイロプラクティック治療室で副院長を務め、現在もシオカワスクールの講師をしていると分かり、「この先生なら大丈夫だ」と確信し、当院を訪れることを決意した。少しでも息子の状態が良くなり、以前のような元気な生活を取り戻せるようにと、最後の希望を託す気持ちで来院した。


【神奈川県横須賀市から来院】

初診の状態

• 01

  第一頸椎右横突起にスポンジ状の浮腫

• 02

  頸部右胸鎖乳突筋の過緊張

• 03

  左仙骨翼にスポンジ状の浮腫

経過と内容

初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎右横突起と左仙骨翼に強い浮腫が確認され、頚部右胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板はそれほど慢性的な段階は確認されなかったが、首の前弯カーブ（前カーブ）は消失してストレートネックとなっていた。

初診時の問診では、目の焦点が合わず、会話のキャッチボールが難しい状態だった。質問に対して支離滅裂な返答をすることが多く、意識の混乱や軽度の強迫観念のような症状も確認された。

腰部の椎間板はD3レベルと慢性的な変性がみられたが、症状の主因は明らかに自律神経の不調と判断し、週1回の施術から開始することにした。

2週目(2回目のアジャストメント)には、眼振運動検査が陰性となる。初診時には顕著な陽性反応が確認されていたが、3回目の来院時にはほとんど消失していた。

4週目(4回目のアジャストメント)には、会話時の目の焦点が合うようになり、話の内容も明瞭になった。以前のような支離滅裂な返答はなく、自然なやり取りができるようになった。加えて、強迫観念のような状態もかなり落ち着いていた。

6週目(6回目のアジャストメント)には、夜間の睡眠が安定し、朝スムーズに起きられるようになった。睡眠の質が向上したことで、日中の倦怠感も軽減。また、以前から気になっていた腹部のガス溜まりもほとんど感じなくなった。

7週目(7回目のアジャストメント)には、中学2年生の一学期以来、日中に積極的に活動できるようになった。これまで長期間続いていた倦怠感が改善し、学校にも毎日通えるようになった。さらに、放課後には友人と遊ぶ余裕ができ、社会的な交流も積極的に行えるようになった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察

今回の起立性調節障害による不眠症、過眠症、倦怠感、ガス溜まり、強迫観念は、自律神経のバランスの乱れが主な原因であったと考えられる。

検査では骨盤部と上部頸椎に強い反応が見られた。これらの部位は副交感神経の働きに大きく関与する領域であり、ここにサブラクセーション（神経機能の異常）が生じていたことで、副交感神経の働きが抑制され、交感神経が過剰に働く状態が長期間続いていたと推測される。その結果、自律神経のバランスが崩れ、多岐にわたる症状が引き起こされていた。

特に第一頸椎（アトラス）に顕著な異常が確認された。第一頸椎は脳幹に最も近い部位であり、全身の神経機能をコントロールする重要な役割を担っている。人間の治癒力は「脳 → 脊髄 → 末梢神経」へと伝わるため、この領域に問題が生じると、全身の機能に影響を及ぼす。

今回の症例では睡眠障害（夜間の不眠・日中の過眠）がみられたが、これは体内時計（概日リズム）の乱れによるものであり、自律神経のバランスの崩れが関与していたと考えられる。睡眠は身体の回復時間であり、睡眠の質が低下することで回復力も低下してしまう。

また、ガス溜まりによる腹部の張りもみられたが、腸の蠕動運動（ぜんどううんどう）は主に副交感神経の働きによるものである。副交感神経のサブラクセーション（神経機能の異常）によって、腸の蠕動運動が低下し、腸内に不純物が長く停滞することでガスが発生しやすい環境になっていたと考えられる。

強迫観念のような症状もみられたが、人間の精神状態はホルモンバランスの影響を強く受ける。自律神経の乱れはホルモンの分泌異常を引き起こし、精神的な不安定さや思考の偏りを助長する。

例えば、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、90%以上が腸で作られ、脳で分泌されるのはわずか2%程度であるという研究結果がある。この腸と脳の密接な関係（脳腸相関）が、自律神経と精神状態の関連性を示唆している。腸の働きが悪くなることでセロトニンの分泌が低下し、不安感や強迫的な思考が強くなる可能性がある。

アジャストメントによってサブラクセーション（神経機能の異常）が解消され、神経の流れが正常化したことで、自律神経のバランスが整い、さまざまな症状が改善されたと考えられる。

また、初診時には眼振運動検査が陽性であり、会話もかみ合わず意識の混乱が見られた。しかし、適切な施術により眼振運動検査が陰性となり、会話がスムーズに行えるようになるなど、短期間での大きな変化が確認された。

今回の患者は中学2年生の夏から症状を発症し、高校1年生で来院した。人間の治癒力は年齢に関係なく働くが、特に若年期の神経系は柔軟性が高く、短期間での改善が期待できる。

わずか7回のアジャストメントで劇的な回復が見られたことから、若いうちからカイロプラクティックケアを受け、神経の流れを整えて体の情報を脳へ正しく伝達することの重要性を再確認できた症例である。