長年動かしづらかった首の可動域が改善! スムーズな動きが戻った

長年動かしづらかった首の可動域が改善! スムーズな動きが戻った

首がスムーズに動き、振り向く動作も快適に!

60代男性
来院に至った経緯
仕事は約40年間、デスクワーク中心の生活を続けており、一日中会議やパソコン作業に追われていた。座りっぱなしの時間が長く、気づけば慢性的な腰痛を抱えるようになっていた。

整形外科を受診すると「腰椎5番の分離すべり症」と診断され、それ以来、ぎっくり腰を何度も繰り返すようになった。腰の痛みが悪化すると動くことも辛くなり、お風呂に入る時間以外は常にコルセットを巻いて生活するようになった。

特にここ10年ほどは、腰の痛みが強くなるたびにコルセットを外せない状態が続いており、仕事が終わる頃には腰がガチガチに固まり、帰宅後はすぐに横にならないと耐えられないことも増えていた。

そんな生活が続くなか、20年ほど前から顎の違和感を感じるようになった。最初は「なんとなくおかしい」と思う程度だったが、次第に食事中に顎がガクガクと音を立てるようになり、食べるたびに異音が気になるようになっていった。

同時に、一緒に寝ている奥様から「寝ているときに歯ぎしりや食いしばりがひどい」と指摘されることが増え、朝起きると顎が疲れている感覚を覚えることがあった。

また、学生時代から副鼻腔炎にも悩まされていた。特に冬場は鼻の奥が詰まるような感覚があり、集中力が低下することもしばしばあった。鼻の不調が続くことで、頭が重く感じたり、ぼんやりすることも増えていた。

そんななか、来院の3週間前、突然首が動かなくなるという事態に陥った。最初は寝違えたのかと思ったが、時間が経ってもまったく改善せず、むしろ日に日に可動域が狭くなっていくのを感じた。ついには振り向くこともできなくなり、仕事中にパソコンの画面を見るのも辛くなっていった。

「これはさすがにまずい」と思い、整形外科を受診。レントゲンやMRI検査を受けたが、医師からは「それほど異常はありません。首の椎間板が少し薄くなっていますが、年齢による変化なので様子を見ましょう」と言われるのみだった。痛み止めを処方されたものの、症状は悪化する一方で、首の動かない状態が続いた。

「このまま仕事を続けるのは難しいかもしれない」と思い始め、そろそろ引退を考えなければならないのかもしれないと悩んでいた。そんな時、会社の部下が「私の家族がカイロプラクティックで首の痛みが良くなりましたよ」と勧めてくれた。

カイロプラクティックは受けたことがなかったが、長年の腰痛、顎の違和感、そして突然の首の不調が続くなか、「このままではいけない」と思い、一度試してみようと決意し、来院された。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    頸部左胸鎖乳突筋の過緊張

  • 02

    頸部左側屈時と右回旋時の極端な可動域制限

  • 03

    第一頸椎左横突起にスポンジ状の浮腫

経過と内容
初診時の状態では、第一頸椎と左仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎左横突起と左上後腸骨棘上端内縁に強い浮腫が確認され、頚部左胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、整形外科で診断された腰椎5番の分離すべり症に加え、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD6レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっており、激しい椎骨の変性が認められた。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。

【3週目】(3回目のアジャストメント)
頸部の左側屈時と右回旋時にみられた極端な可動域制限が、少しずつ改善し始めた。また、長年続いていた腰痛にも変化が現れ、腰椎コルセットを外していても、デスクワーク後に立ち上がる動作が楽になった。さらに、これまで仰向けで寝ると腰に負担がかかり辛かったが、無理なく仰向けで眠れるようになった。

【7週目】(7回目のアジャストメント)
頸部の可動域が大幅に改善し、振り向く動作もスムーズになった。加えて、副鼻腔炎にも変化が見られ、鼻の通りが良くなり、呼吸が楽になったと感じるようになった。

【11週目】(11回目のアジャストメント)
奥様から『以前より食いしばりや歯ぎしりの音が気にならなくなった』と言われるようになった。顎関節の状態も改善し、食事中の咀嚼時に感じていた異音が気にならなくなった。また、大きく口を開けてもガクガクすることが減り、スムーズに開閉できるようになった。

【16週目】(16回目のアジャストメント)
首の可動域はすっかり回復し、日常生活での動きに制限を感じることがなくなった。また、長年悩んでいた腰痛もほとんど気にならなくなった。さらに、これまで意識していなかった睡眠の質が大幅に向上し、一晩眠ると翌朝には疲れがしっかり回復しているのを実感するようになった。

現在は症状が安定しており、さらなる身体の健康向上のために、継続的なカイロプラクティックケアを行っている。

考察
今回の首の可動域制限の原因は、第一頸椎の極端な可動制限にあったと考えられる。第一頸椎は特殊な構造(輪状)をしており、脳幹から出る脊髄が通る非常に重要な部位である。この部分に神経圧迫が生じると、脳と体の情報伝達に大きな負担がかかるため、体はこれ以上の負荷を回避しようとし、頸部全体の可動域を制限していたと考えられる。

顎関節の問題も同様に、第一頸椎の影響を大きく受けていた可能性が高い。顎関節は人体の関節の中でも特に小さく繊細な構造をしており、頸椎(特に第一頸椎)のバランスが崩れることで大きな影響を受けやすい。首のバランスが整うことで顎関節の負担が軽減し、食事中の違和感や開閉時の不快感が気にならなくなった。

また、骨盤部にも明らかな可動域制限が確認されていたが、これは第一頸椎にかかる負担とも密接に関連していた。人間の脊柱は24個の椎骨で構成されており、ビルに例えると24階建ての建物のようなもの。その土台である骨盤が不安定になると、その影響は最上部の第一頸椎まで伝わり、大きな歪みや負担を生じさせる要因となる。

さらに、上部頸椎と骨盤部はどちらも自律神経の副交感神経支配の領域である。副交感神経は、睡眠やリラックス時に活発になる神経だが、睡眠中の食いしばりや歯ぎしりが見られる場合、交感神経のスイッチが切れず、睡眠時にも常に緊張状態が続いている可能性がある。今回の施術によって交感神経の過剰な働きが抑えられたことで、食いしばりの頻度が減少したと考えられる。

副鼻腔炎に関しても、自律神経のバランスが関与している可能性が高い。ウイルスや細菌感染、アレルギー反応などが副鼻腔炎の主な要因だが、これらの免疫反応には血液中の顆粒球の比率が関係している。顆粒球の一種である好酸球は、交感神経が優位な状態でその割合が増加する傾向にある。

今回の症例では、副交感神経が正常に機能していなかったため、交感神経が過剰に働き、アレルギー物質に対する反応が強くなっていた可能性が高い。施術によって自律神経のバランスが整ったことで、副鼻腔の通りが良くなり、症状が軽減されたと考えられる。

腰痛については、整形外科で診断された腰椎5番の分離すべり症があるため、直接的なアプローチは避けたものの、腰椎に過剰な負担をかける要因となっていたのは骨盤部の不安定性であったと考えられる。分離すべり症は、椎骨が過度のストレスを受け続けた結果として発生することが多く、その多くは骨盤の不安定性が原因となっている。

また、長年にわたり腰椎コルセットを常用していたことも、骨盤部の不安定性を助長する一因となっていた可能性が高い。腰椎コルセットを長期間使用すると、腰部や骨盤周囲の筋力が低下し、関節の可動域制限が生じやすくなる。施術によって骨盤部の安定性が向上し、結果的に腰部の負担が軽減されたことで、腰痛の改善につながったと考えられる。

頸部のレントゲン側面像では、頸椎5番の椎間板がD6レベルまで進行しており、椎骨の変性も認められた。しかし、触診ではこの部位が過可動(ハイパーモビリティ)の状態であり、逆に上下の椎骨の可動域が低下していたことが確認された。

これは、制限された可動域を補うために特定の部位が過剰に動くことで生じる補正作用の典型例である。このような場合、「可動域が制限されている部位=アプローチすべき部位」とは限らず、適切な検査を通じて根本的な問題を特定することが重要となる。

今回の症例では、精密な検査をもとに神経の働きを適切に評価し、的確なアプローチを続けたことで、可動域制限、腰痛、顎関節の不調、副鼻腔炎、睡眠の質など、多岐にわたる症状の改善が見られた。

ただ単に問題がある部位を施術するのではなく、神経系の働きを正確に把握し、根本的な原因に対してアプローチすることの重要性が改めて示された症例である。
長年動かしづらかった首の可動域が改善! スムーズな動きが戻った
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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