2025.03.18

コルチゾールが女性ホルモンを乱す!?コルチゾールを解説

カテゴリ: 健康通信
コルチゾールが女性ホルモンを乱す!?コルチゾールを解説

ストレスホルモンといわれるコルチゾールですが、コルチゾールが過剰に分泌されるとエストロゲンやプロゲステロンのバランスが乱れやすくなります。

今回のコラムでは、女性ホルモンとコルチゾールの関係性、そしてコルチゾールについて詳しくお伝えしていきます。

コルチゾールとは?

コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの一種で、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。主な役割は、ストレスへの適応、エネルギー代謝の調整、免疫機能の維持、炎症の抑制などです。

このホルモンは一日の中で分泌のリズムがあり、朝に多く分泌され、夜にかけて減少することで体のバランスを保っています。しかし、ストレスが慢性的に続くとコルチゾールの分泌が過剰になり、ホルモンバランスの乱れや体調不良の原因となります。

コルチゾールの主な働き

1、ストレスへの対応

コルチゾールは、身体がストレスを感じたときに分泌され、いわゆる「戦うか逃げるか」反応をサポートする役割を果たします。

ストレスを受けると、脳の視床下部が副腎に信号を送りコルチゾールの分泌を促します。この作用によって血糖値が上昇し、脳や筋肉にエネルギーが供給されると同時に、血圧が上昇し、心拍数が増加してすぐに行動を起こせる状態になります。また、炎症を抑えて免疫機能を調整する働きもあります。

短期的なストレスでは体を守る役割を果たしますが、慢性的なストレスによってコルチゾールが過剰に分泌されると体にさまざまな悪影響を及ぼします。

 

2、血糖値の調整

コルチゾールには、血糖値を維持する重要な役割があります。空腹時やストレスがかかったときには肝臓で糖新生を促進し、タンパク質や脂肪を分解してエネルギーを供給します。

しかし、コルチゾールが過剰に分泌されるとインスリンの働きを抑えてしまうため、血糖値が高い状態が続くことがあります。この状態が慢性的になるとインスリン抵抗性が高まり、糖尿病のリスクが増加するだけでなく体重増加にもつながります。

 

3、免疫機能と炎症の調整

コルチゾールには、免疫反応を抑える作用があります。炎症を抑え、腫れや痛みを軽減する抗炎症作用があるため、ステロイド薬として炎症性疾患や自己免疫疾患の治療に利用されています。

しかし、コルチゾールが過剰に分泌されると、免疫力が低下し風邪をひきやすくなったり、感染症にかかりやすくなるリスクが高まります。

 

4、体脂肪の蓄積と体重増加

ストレスが慢性的に続くと、コルチゾールの影響で脂肪が蓄積しやすくなります。特に、お腹周りに脂肪がつきやすくなることが特徴です。

コルチゾールが高い状態では糖をエネルギーとして消費しやすくなる一方で、脂肪を蓄積しやすくなります。また、食欲が増し高カロリーの食べ物を欲するようになるため、ストレス太りの原因にもなります。

コルチゾールとホルモンバランスの関係

1、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)との関係

コルチゾールは、副腎で作られるストレスホルモンであり、体がストレスを感じたときに分泌されます。ストレスを受けたとき、体は生き延びることが最優先になるため、生殖機能よりもストレスへの対応を優先します。

コルチゾールの合成にはプレグネノロンというホルモンが必要です。しかし、プレグネノロンはプロゲステロンの材料にもなるため、ストレスが長期間続くとコルチゾールを作るためにプレグネノロンが消費され、プロゲステロンの生成が減少してしまいます。これを 「プレグネノロン・スティール(略奪)」 といいます。結果としてプロゲステロンが不足し、エストロゲンとのバランスが崩れやすくなります。

 

 コルチゾールがエストロゲンを増やし「エストロゲン優位」になる

プロゲステロンが減少すると、本来はプロゲステロンとバランスを取り合っているエストロゲンが相対的に優位になります。これを「エストロゲン優位」と呼びます。ストレスによるコルチゾールの過剰分泌は、エストロゲンとプロゲステロンのバランスを崩し、生理痛やPMSの悪化につながるのです。

 

2、甲状腺ホルモンとの関係

コルチゾールが過剰に分泌されると、甲状腺の働きを抑制する影響があります。具体的には、甲状腺ホルモンであるT4(サイロキシン)をT3(鳥ヨードサイロ人)に変換するプロセスを妨げてしまいます。

これにより代謝が低下し、疲労感が続いたり体重が増えやすくなったりするなどの症状が現れることがあります。

 

3、コルチゾールの過剰分泌による「視床下部ー下垂体ー卵巣(HPO)軸」への影響

エストロゲンやプロゲステロンは、脳の視床下部・下垂体・卵巣(HPO)軸によってコントロールされています。しかし、ストレスが慢性的に続きコルチゾールが多く分泌されると、このHPO軸の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が不安定になります。

その結果、排卵がスムーズに行われなくなることで無排卵月経や生理不順やエストロゲンとプロゲステロンのリズムが乱れることでホルモンバランスの乱れや生理痛や更年期症状の悪化に繋がることがあります。ストレスが続くとホルモンバランスが崩れやすくなり、生理や更年期の不調が起こりやすくなります。

コルチゾールが過剰になると起こる症状

慢性的なストレスによりコルチゾールが高い状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります。

 

  • ・慢性的な疲労感があり、朝起きてもスッキリしない
  • ・睡眠の質が低下し、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりする
  • ・食欲が増加し、特に甘いものや高カロリーな食品を欲するようになる
  • ・免疫力が低下し、風邪をひきやすくなる
  • ・血糖値が上昇し、糖尿病のリスクが高まる
  • ・集中力が低下し、イライラしやすくなる

 

コルチゾールが不足するとどうなる?

一方で、副腎の機能が低下し、コルチゾールの分泌が不足すると、「副腎疲労」と呼ばれる状態になります。この状態では、以下のような症状が現れることがあります。

 

  • ・極度の疲労感が続き、常にだるさを感じる
  • ・低血圧や立ちくらみが起こりやすい
  • ・ストレスに対処できなくなり、気力が低下する
  • ・低血糖の状態になり、甘いものを欲するようになる
  • ・朝がつらく、なかなか起きられない

 

コルチゾールは、ストレスへの対応、血糖値の調整、免疫機能の維持など、私たちの体にとって重要な役割を果たしています。しかし、慢性的なストレスによってコルチゾールが過剰に分泌されると、ホルモンバランスが乱れ、生理痛やPMSの悪化、体重増加、免疫力低下などの女性特有の悩みや不調を引き起こすことに繋がります。

また、コルチゾールが不足すると副腎疲労が起こり、極度の疲労感やストレス耐性の低下につながります。ホルモンバランスを整えるためには、コルチゾールの適切な分泌を保つことが大切です。

中島 恵

執筆者中島 恵

新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティック治療室で実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。

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