更年期に始まる関節痛の本当の理由とは?女性ホルモンと痛みの関係性

40代後半から50代にかけて、多くの女性が「更年期」を経験します。ホットフラッシュ(ほてり)、発汗、イライラ、不眠などがよく知られた症状ですが、「関節痛」や「筋肉痛」といった身体的な痛みに悩まされる方も多いのです。
「朝起きると手指がこわばって動かしづらい」「膝や肩が痛くて正座や階段の昇り降りがつらい」「検査では異常がないのに痛みが続く」など、こうした訴えの背景には更年期に起こるホルモンバランスの乱れと、自律神経の不調が大きく関係しています。
今回のコラムでは、更年期における関節痛の原因やメカニズムについて、女性ホルモンと自律神経の関係性とあわせて詳しくお伝えしていきます。
女性ホルモン(エストロゲン)の減少と関節痛の関係
更年期の女性の体内では、卵巣機能の低下により女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が急激に減少します。このエストロゲンは、生殖に関わるだけでなく、関節や骨、血管、脳、皮膚など、体のあらゆる部分に影響を与える非常に重要なホルモンです。
エストロゲンには抗炎症作用があり、関節内の滑膜や筋肉の炎症を抑える働きをしています。ところが更年期になるとこのホルモンの分泌が減り、炎症が起こりやすくなり、痛みを感じやすい状態になります。
また、エストロゲンは骨や軟骨の代謝を正常に保つ働きもあるため、減少すると骨密度の低下や関節軟骨の変性が進みやすくなります。これが膝や股関節などの荷重関節での痛みの原因になることもあります。
筋肉や腱、靭帯の柔軟性も同時に低下しやすくなり、これらの構造物が硬くなることで関節の動きが悪くなり、さらに痛みを感じやすくなる悪循環に陥ることもあります。
自律神経と女性ホルモンの関係
自律神経は、私たちの意識とは無関係に、心拍や呼吸、体温、血圧、消化、ホルモン分泌などをコントロールしている神経系です。「交感神経(活動モード)」と「副交感神経(リラックスモード)」のバランスによって成り立っています。
この自律神経のバランスを司っているのが脳の視床下部という部位です。そして視床下部は、女性ホルモンの分泌を調整する中枢でもあります。つまり、エストロゲンが急激に減少すると視床下部の働きが乱れ、自律神経にも影響が及ぶのです。
自律神経が乱れると血管が収縮しやすくなり血流が滞ります。その結果、筋肉や関節に十分な酸素や栄養が届かず老廃物も排出されにくくなるため、痛みやこりが慢性化しやすくなります。さらに、自律神経の働きが乱れることで身体の回復力も低下し、痛みが長引いてしまう原因になります。
更年期の関節痛とリウマチの見分け方
更年期に起こる関節痛は、「朝のこわばり」「左右対称に痛む」「複数の関節が痛む」など、関節リウマチと似た症状を示すことがあります。特に手指の関節に違和感を覚える方は、不安を感じることもあるでしょう。
しかし、関節リウマチは自己免疫疾患であり、免疫システムが自分の関節を攻撃することで炎症が起こる病気です。更年期による関節痛とは原因が異なります。血液検査で炎症反応(CRPやESR)やリウマチ因子、抗CCP抗体などを調べることで鑑別が可能です。不安な場合は、早めにリウマチ専門医に相談しましょう。
自律神経の乱れと痛みの“根本原因”にアプローチするには?
更年期に起こる関節痛は、単に「関節の老化」や「ホルモンの減少」だけでは説明できません。実際には、自律神経のバランスが崩れることで全身の血流や回復力が低下し、“痛みを感じやすくなる体の状態”ができあがってしまっているのです。
このような状態に対しては、痛みだけを抑える対症療法だけでなく、根本的に「自律神経のバランスを整える」ことが非常に重要です。
体が正常に機能するためには、脳が体の状態を正確に把握し、適切にコントロールすることが不可欠です。しかし、脳と体をつなぐ神経の流れに障害が生じると、さまざまな情報の処理がスムーズに行われず、体の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
このような神経の乱れがあると、更年期の関節の痛みといった症状が引き起こされることがあります。
カイロプラクティックは、背骨や骨盤の歪みを整えることで神経の流れを改善し、全身の機能を回復させる療法です。特に、自律神経の通り道である背骨周辺の可動性やバランスを調整することで、交感神経と副交感神経の働きを安定させ、心身ともに本来の回復力を引き出すサポートです。
更年期の症状は一人ひとり異なりますが、自律神経と女性ホルモンのバランスを整えることが、共通の“鍵”であることは間違いありません。日々のカイロプラクティック・ケアで健康的な生活を送りましょう。

執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティック治療室で実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。