更年期症状と副腎の関係性とは?

40代後半から50代にかけて、多くの女性が「なんだか体が変わってきた」と感じ始めます。疲れが取れにくい、感情が不安定になる、寝つきが悪い、ホットフラッシュ(のぼせ)や動悸が気になる……。こうした更年期特有の心身の不調は、エストロゲンの減少だけでなく、「副腎」と呼ばれる臓器の状態が大きく関わっているのです。
今回のコラムでは、更年期症状と副腎の働きの関係性についてお伝えしていきます。
小さな臓器「副腎」が果たす大きな役割
副腎は腎臓のすぐ上にある、左右一対の小さな臓器です。けれどその働きは非常に重要で、私たちの体がストレスに対応したり、日々のエネルギーを作り出したりするうえで欠かせない「ホルモン工場」のような存在です。
副腎から分泌されるホルモンにはさまざまなものがありますが、代表的なものとしてまず挙げられるのがコルチゾールです。これはストレスに対抗するために必要なホルモンであり、体内の炎症を抑える役割も果たしています。
次に、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンは、交感神経を刺激して瞬間的に体を「戦闘モード」へと切り替える役割を担っています。危機的状況において瞬時に対応できるよう、心拍数を上げたり血圧を上昇させたりする働きがあります。
そして、もうひとつ大切なのがDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というホルモンです。これは、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの前駆体となるもので、更年期以降、卵巣での女性ホルモン分泌が減少する中、副腎がその補助的な役割を果たすうえで欠かせません。
更年期になると、副腎がホルモンの「代役」を担う
更年期に入ると、卵巣から分泌されるエストロゲンの量が急激に減少します。このとき、体はホルモン不足を補おうとしますが、その代役となるのが副腎なのです。
エストロゲンは女性の体にとって非常に重要なホルモンであり、骨や血管、皮膚、脳、自律神経の働きなど、さまざまな部分に影響を与えています。
体はこのエストロゲンの急激な減少に対して「なんとか補いたい」と反応します。そのとき、エストロゲンの材料になる前駆体を分泌できる臓器として副腎が登場するのです。
副腎の皮質から分泌される「DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)」というホルモンは、エストロゲンやテストステロンなどの性ホルモンの元になる物質です。副腎が健康で働いていると、DHEAをもとに少量ながらエストロゲンを補うことができるのです。
ところが、長年にわたる慢性的なストレス、不規則な生活習慣、過労などによって、副腎が疲弊した状態になっていると、本来の働きを十分に果たせません。これが「副腎疲労」と呼ばれる状態で、更年期症状の悪化や長期化を招く一因となります。
自律神経との深い関わり
副腎の働きは、自律神経のバランスとも密接に関わっています。自律神経は、私たちの体内で無意識に働く神経で、心拍、呼吸、消化、血流などをコントロールしています。
強いストレスや睡眠不足が続くと自律神経のバランスが乱れ、副腎はコルチゾールなどのホルモンを多く分泌しようとします。その状態が長く続くと副腎が疲れ、やがてホルモンの分泌がうまくいかなくなるのです。
カイロプラクティックが副腎と自律神経に与える働き
カイロプラクティックでは、背骨や骨盤を整えることで神経の流れをスムーズにし、自律神経の働きを助けるサポートをします。。
更年期は、人生の転機であると同時に、これまで頑張ってきた体からの「リセットのサイン」でもあります。
副腎が正常に働くために、脳と神経の連携が不可欠
副腎が正常に機能するためには、脳が体全体の状態を正確に把握し、その情報をもとに副腎の働きを的確にコントロールすることが不可欠です。しかし、脳と副腎をつなぐ神経の流れに障害が生じると、ストレスへの対応やホルモンの調整がうまくいかなくなり、体にさまざまな不調が現れる原因になります。
神経伝達が乱れると、副腎から分泌されるコルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンのバランスが崩れ、疲れやすさ、不眠、気分の落ち込みなど、日常生活に影響を及ぼす症状が出やすくなります。
カイロプラクティックでは、背骨や骨盤周囲の神経圧迫を取り除き、神経伝達をスムーズにすることで、自律神経の働きを整え、副腎のホルモン分泌をサポートします。特に首や背中のバランスを整えることで、脳と副腎の情報のやり取りがスムーズになり、全身のストレス応答機能が整いやすくなります。
近年、「フェムテック」という言葉が注目されるようになり、女性の健康やヘルスケアへの意識も高まってきています。ストレスレベルや睡眠の質、ホルモンの変化を把握できるツールが増え、自分の体のリズムを知るきっかけになります。
副腎の不調は、単なる疲れではなく、体からの「少し立ち止まって」というサインかもしれません。
カイロプラクティックで自分の体の状態を知り、フェムテックを活用して日々の体調を観察することで、自分のライフサイクルに合ったケアがしやすくなります。トラブルが起きやすいタイミングを知ることで、より効果的な予防にもつながるでしょう。
日々の忙しさの中だからこそ、自分の体の声に耳を傾ける時間を大切にしていきましょう。
副腎や自律神経、ホルモンのバランスを整えることは、更年期症状の軽減だけでなく未来の健康づくりにもつながる大切なステップです。カイロプラクティック・ケアは、心と体の味方になってくれるはずです。

執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティック治療室で実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。